ウミガメの世界へようこそ!

陸上がまだ恐竜に支配されていた頃、その住処をを広大な海洋に求めたカメがいた。

今日、生息数の減少が危惧されているウミガメである。

陸上に上がるのは産卵の時だけで後は一生を海で過ごす、子ガメは生まれるとどこへ行くのか?母ガメはどうやって砂浜に戻ってくるのか?ウミガメと人間の謎解き遊びはまだまだ続く!

さて皆さん、ウミガメといえば多くの方がウミガメが涙を流し産卵するシーンを思い浮かべるのではないでしょうか?

実はあれ、ウミガメの目の下部に塩涙腺というものがあり、長時間海中を浮遊泳するウミガメが砂浜に上陸した際に塩涙腺から体の中にある塩分を流し体中の塩分濃度を調節してるんです。

また、産卵を終え、卵が孵化した後、子ガメ達は砂浜から這い出て暗闇の砂浜を海に向かって一目散に駆け出します、なんで暗闇の中を海の方向を間違えずに駆け出す事ができるのでしょうか?

答えはこちら

ウミガメはまだまだ解明されていない謎が多く、とても神秘的で未知な生物です。

それでは一緒にウミガメの世界を見てみることにしましょう!

ウミガメとは

初期の爬虫類の中から地球上で最初のカメが現れたのは三畳紀後半(約2億1500万年前)のことです。

このカメが既にもっていたのが堅い甲羅でした、現在では甲羅を持っているのがカメだと考えられます。

しかし、最初のカメがどうして甲羅をもつことになったのかは今も分かっていません、ただ堅い甲羅はカメだけに与えられた独特の防御シスエムとなりました。

そして、これが幸いしたのかカメはほとんど姿を変える事もなく、現代まで生き残ることができたのです。

ウミガメの祖先として有名な化石種は、プロトステガ科に属するアルケロンです、全長3.5mにもなる大型のウミガメで、甲羅の表面は現生のカメのような角質の板ではなく、ゴムのような強靭な皮膚で覆われていたと考えられています。

これは現生種のオサガメによく似ています。

ところでウミガメの住処は地球を取り巻く広大な海洋ですが、その内、日本周辺の海域には5種のウミガメが回遊しています、このうち産卵のために上陸してくるのは、アカ、アオ、タイマイの3種です。

産卵が終わると別の海域に泳いで行ってしまいます、産卵のため上陸してきたアカウミガメの雌に標識をつけて、その後の回遊を調べた結果、冬の間は東シナ海で過ごしている事が分かってきました。

ウミガメは魚のようなエラを持っていないので他のカメ類同様肺で呼吸しなければなりません

水面に顔を出す時に吸い込んだ空気を肺にためてアカウミガメやアオウミガメは水深200m以上も潜る事ができます、2時間以上の潜水も可能だと言われています。

ちなみに私の場合水深30mが限界です、テクニカルダイビングの場合更に深度を下げる事も可能ですが、人間の場合60mを超えた付近から窒素酔いにかかり意識がなくなる可能性があるため危険極まりないです。

種類

アカウミガメ(学名:Caretta caretta)

アカウミガメ

亜熱帯から温帯域までを繁殖の場とし、熱帯域までを回遊している。

分布域は地中海、インド洋、アメリカ東海岸、オーストラリアなどで、日本は北太平洋において最大の産卵場である。

甲羅は赤褐色で、椎甲板は5、助甲板は5対である。

食べ物は雑食性で、海藻類、甲殻類、魚類などなんでも食べる。

アオウミガメ(学名:Chelonia mydas)

アオウミガメ

亜熱帯から温帯域までを繁殖の場とし、温帯域までを回遊している。

フィリピン、インドネシア、ハワイ諸島など熱帯域に多く上陸産卵し、日本では小笠原に多い。

甲羅は緑黒色で、椎甲板は5、助甲板は4対である。

直甲長は90cm~100cmものが多いが100cmを超える個体もある。

草食性で海藻や藻類を食べるが子ガメのうちは雑食である。

タイマイ(学名:Eretmochelys imbricate)

タイマイ

亜熱帯から帯域までを繁殖の場とし、温帯域までを回遊している。

日本では沖縄以南で産卵が確認されている。

甲羅は屋根瓦状に重なり、黄色地に茶色または茶褐色の雲状の班文が入り混じり、複雑な模様をしている。

甲長は80cm前後のものが多い、椎甲板は5、助甲板は4対である。

頭部は小さく、嘴はタカのように尖っている、甲羅と複甲は鼈甲細工に用いられるが絶滅の恐れがあるため、日本でも輸入禁止になっている。

食べ物は海綿などの無脊椎動物、海藻類、魚類、貝類などを食べる、肉食傾向の強い雑食性。

オサガメ(学名:Dermochelys coriacea)

オサガメ

熱帯域を繁殖の場とし、温帯域も回遊している。行動範囲は広く、日本近海でも見ることができる。

体色は黒っぽく、尻部は尖っている、また1枚の皮膚よりできていて助甲板がなく、白色の点が散在する。背甲には7本のキール状の突起がある。

ウミガメの中では最大で甲長は180cm位、体重700~800kg、中には甲長250cmを超え体重1t近いカメもいる。

泳ぎはウミガメの中で最も早く、突進して行く性格があるためプールなどの飼育は難しい。

食べ物はクラゲや、浮遊性のホヤ類や魚類などをたべる。

クロウミガメ(学名:Chelonia mydas agassizii)

太平洋の東海岸(メキシコ、コスタリカ)に限定して分布している。

甲羅は黒く、甲長は90~100cmで椎甲板5、助甲板は4対である。

アオウミガメとよく似ているが、甲羅が黒色であり、後部に向かってテーパー状になり尖っている特徴があることから、種として独立したウミガメと考えられる。

食べ物は海藻類を主とするが海綿、クラゲ、ウニ、甲殻類などを食べる。

ヒラタウミガメ(学名:Natator depressus)

インド洋東部とオーストラリア北部の限られた地域に上陸してくる。

甲羅の厚さはウミガメの中で最も平たく、背甲の両脇の縁甲板は上方に反っている。

椎甲板は5、助甲板は4対である。体色は灰色をおびたオリーブ色。甲長は120cmにもなる。

ヒメウミガメ(学名:Lepidochelys olivacea)

熱帯域を繁殖の場とし、温帯域にも回遊してくる。世界的に有名な産卵地はコスタリカ、インド北東部、メキシコである、又、多くのヒメウミガメが一斉に産卵するアリバダは見ものである。

甲羅の色はオリーブ色で、椎甲板7、助甲板は7椎である。甲長は70cm前後で、甲羅は丸みをおびている。

ウミガメの中ではケンプヒメウミガメとともに最も小型である。

食べ物はカニ、エビ、魚類、軟体動物など砂泥地にいる動物を好む、肉食傾向が強い。

ケンプヒメウミガメ(学名:Lepidchelys kempi)

甲羅は円形に近く、色は灰白色またはオリーブ色。甲長70~80cmヒメウミガメと同様、ウミガメの中では最も小さい。

メキシコの大西洋岸の限られた地域に生息しウミガメの中では最も数が少なく減少が心配される。

メキシコ湾のエビ漁業で混獲されるため保護の対象となっている。

調査活動

巣穴
孵化
ウミガメ

ウミガメの調査は大きく2つに分かれます

産卵調査(4月下旬~7月上旬)孵化調査(7月下旬~10月上旬)
上陸場所、時刻の確認産卵場所特定・穴掘り
産卵の有無、タグ(個体標識)の確認孵化調査(ex.総個数の内、何個体が海に海帰し何個体が死んでいるのか?死因は何か?など)
タグ付け、調査票記入
甲長・甲幅測定、体重測定穴埋め
個体の損傷確認、産卵時間計測これを朝晩ひたすら繰り返します
周囲の環境確認、産卵場所マーク付け活動後酒飲んで寝ます

上記の調査活動以外にも、植樹活動・砂浜の清掃活動・ウミガメの知識普及、啓蒙活動、全世界共有の財産である為、各国の研究成果発表・保全への取組み、交流などを目的とした国際フォーラムが行われています。

日本ではNPOである日本ウミガメ協議会が国際的な窓口となり、ウミガメ研究の第一人者・先駆けとなって活躍しています。その他、日本屈指の上陸頭数屋久島(アカウミガメ)や小笠原諸島、徳島日和佐、熊本天草、伊豆半島、和歌山など太平洋側において多くの団体がウミガメの保護、砂浜を守るための環境保全に取り組んでいます。

ウミガメに直接関わらなくとも、協力できることはたくさんあります、例えば活動団体への寄付・情報提供・砂浜のゴミ拾い・夜の砂浜でライトを点灯しない、ウミガメを発見したら近くのウミガメ団体に連絡を入れるなど。

そして関心の無いかたでも一度ウミガメを直接自分の目で見る事をお勧めします!